しゃくこつしんけいまひ
尺骨神経麻痺とは、手や指の動き、特に小指や薬指の一部の感覚および手内筋を含む運動機能をつかさどる尺骨神経が損傷することで生じる神経障害です。この障害が生じると、細かい手の動きが困難になる巧緻運動障害や、小指と薬指が曲がったままになる鉤爪指変形(鷲手変形)といった症状が現れます。尺骨神経は、脊髄から腕を通り、肘の内側や手首を経て手に至る、三大末梢神経(他は橈骨神経と正中神経)の一つです。麻痺の原因としては、交通事故による骨折などの外傷のほか、肘部で神経が圧迫される肘部管症候群や、手関節部で障害を受けるギヨン管症候群などがあり、これらにより神経経路のいずれかの部位で障害が生じます(下記の実例では、上腕骨の骨折により尺骨神経を損傷しています)。診断には、神経の異常を調べるチネル徴候やフローマン徴候といったテストのほか、筋電図やMRIなどの検査が用いられます。
実例 後遺障害等級認定 12級13号
自転車乗車中に左折する大型車に巻き込まれる交通事故により上腕骨を骨折し、受傷当初から巧緻運動障害や手指の感覚消失など、尺骨神経の損傷が疑われる症状がみられました。そのため、治療開始当初から治療終了までの間、後遺障害診断書に症状の内容が適切に反映されるよう、必要な検査について継続的にアドバイスを行いました。その結果、自賠責保険において尺骨神経麻痺による症状が認められ、後遺障害等級12級13号の認定を得ることができました。