シーアールピーエス
CRPS(複合性局所疼痛症候群)とは、外傷や手術などによる組織損傷を契機として発症し、創傷が治癒した後も、通常の回復過程では説明のつかない強い慢性的な痛みが持続する病態の総称です。厚生労働省の研究班によって医療機関向けの判定指標が作成されていますが、これはあくまで治療方針の決定や専門医療機関への紹介判断に用いることを目的としており、外傷に対する補償や訴訟を目的として使用すべきではないと明記されています。その理由は、CRPSの発症機序が未解明であり、さまざまな要因によって生じる類似の状態を経験的に判定する指標であるため、そこで取り上げられる要件が主観的とならざるを得ず、医学的に完全な客観評価が困難であるためです。したがって、交通事故に伴う損害賠償金の支払いに関わる自賠責保険の後遺障害認定基準では、より厳格に骨萎縮や皮膚の変化といった客観的な所見が重視されており、医師の診断結果と保険上の認定内容に相違が生じやすく、争点となることが多い病態といえます。