かんこつきゅうこせつ
寛骨臼骨折とは、股関節を構成する骨盤側の受け皿部分である寛骨臼に生じる骨折を指します。寛骨臼は、腸骨・坐骨・恥骨の3つの骨から構成されており、股関節のソケット部分を形成しています。この骨折は、主に自動車事故やバイク事故、転落事故などによる高エネルギー外傷によって発生します。特に自動車事故では、ダッシュボードに膝を強打することで大腿骨頭が寛骨臼に押し込まれ、骨折を生じることが多く報告されています。寛骨臼骨折の代表的な合併症としては、関節面に及ぶ骨折であることから、変形性股関節症の発症が挙げられます(実例1)。また、坐骨神経損傷による神経障害や、まれに大腿骨頭への血流障害に伴う大腿骨頭壊死が生じることもあります。
実例1 後遺障害等級変更 併合11級→併合9級
バイク乗車中の交通事故により、寛骨臼骨折を受傷しました。これにより股関節に可動域制限が残存し、自賠責保険において12級7号が認定され、他の障害と併合して併合11級と認定されました。その後、加害者側に対して訴訟を提起し、裁判上の和解によって解決することとなりましたが、将来的に変形性股関節症の進行が予想されたため、人工股関節置換術が必要となった場合には、その後の損害について別途協議する旨の留保条項を付した和解内容としました。その後、実際に人工股関節置換術が施行されたため、改めて後遺障害認定を申請したところ、人工関節置換後の著しい機能障害により10級11号が認定され、他の障害と併合して併合9級と認定されました。その結果、併合9級を前提とする損害額と、既に支払われていた併合11級を前提とする損害額との差額の支払いを受けることができました。(担当 栄町法律事務所 弁護士 吉田皓)
実例2 後遺障害等級認定 14級9号
横断歩道を歩行中に信号の色が変わり、信号待ちをしていた四輪車が歩行者の存在に気付かず発進したため、これを避けようとして転倒し、寛骨臼骨折を受傷しました。保存的加療およびリハビリテーションを受けましたが、歩行時痛が残存し、後遺障害等級14級9号が認定されました。(担当 栄町法律事務所 弁護士 中島賢二郎)
弁護士コメント
寛骨臼を含む骨盤内には豊富な血管が存在しており、骨折によってこれらの血管が損傷すると大量出血を生じ、生命に関わる状態や重大な後遺障害につながることがあります。一方で、そのような重篤な合併症を伴わない場合には、比較的軽度の症状の残存にとどまることもあり、同じ寛骨臼骨折であっても、損傷の程度や合併損傷の有無によって経過は大きく異なります。
<文責:栄町法律事務所 弁護士 中島賢二郎>