じょうわんこつこつかんぶこっせつ
上腕骨骨幹部骨折とは、上腕骨(肩と肘の間にある長い骨)の中央部分(骨幹部)に生じる骨折です。交通事故や転倒などの強い外力によって発生します。症状としては、骨折部の疼痛、腫脹、変形、異常可動性などがみられます。また、上腕骨骨幹部の後外側を走行する橈骨神経が損傷されることがあり、その場合には手関節や手指を伸ばすことが困難になる下垂手(drop
hand)や、手背のしびれなどの症状を生じることがあります。治療は、骨折の状態に応じて装具による保存療法や、プレート固定術、髄内釘固定術などの手術療法が選択されます。特に肩関節から髄内釘を挿入する方法(順行性髄内釘固定術)では、腱板への影響などにより、骨癒合後も肩関節の疼痛や可動域制限が残存することがあります。
実例1 後遺障害等級認定 併合10級
横断歩道を歩行中、信号無視の自動車にはねられ、上腕骨骨幹部骨折および下顎骨骨折の傷害を負いました。上腕骨骨幹部骨折の治療のため、肩部を切開し、腱板を切開して髄内釘を挿入する手術(順行性髄内釘固定術)が施行されましたが、肩関節の可動域制限が残存した結果、10級10号が認定され、他の障害と併合して併合10級が認定されました。(担当 栄町法律事務所 弁護士 安東直哉)
実例2 後遺障害等級変更 非該当→併合14級
被害者が二輪車で矢印信号に従って右折しようとしたところ、信号を無視した直進四輪車と衝突し、上腕骨骨幹部の粉砕骨折を受傷しました。これにより、上腕の手術創部から前腕外側にかけて触覚鈍麻の後遺障害が残存しました。当初は、骨折部の癒合が良好であることを理由として、触覚鈍麻は後遺障害として認定されませんでした。栄町法律事務所で画像や診療記録を検討したところ、本件骨折は転位が大きく、プレート固定術が施行されていました。また、上腕の手術創部付近には下外側上腕皮神経、後前腕皮神経、外側前腕皮神経などの皮神経が走行しています。そのため、上腕の手術創部から前腕外側に及ぶ触覚鈍麻は、骨折による直接損傷、あるいは手術に伴う神経損傷によって生じた可能性が高いと考えられました。そこで、その医学的根拠を示して異議申立てを行った結果、神経症状として14級9号が認定され、他の後遺障害と併合して併合14級が認定されました。(担当 栄町法律事務所 弁護士 安東直哉)
弁護士コメント
上腕骨骨幹部骨折では、骨折そのものよりも、治療のための手術に伴う影響によって後遺障害が残存することが少なくありません。特に、順行性髄内釘固定術による肩関節機能障害や、手術に伴う皮神経損傷による感覚障害は見落とされやすい後遺障害です。そのため、後遺障害認定手続では、骨折の治癒状況だけでなく、手術方法や神経の走行、術後症状との整合性を十分に検討することが重要であり、本来認定されるべき後遺障害等級が見落とされることも少なくありません。
<文責:栄町法律事務所 弁護士 中島賢二郎>