ふくし
ものが二重に見えることを「複視」といいます。複視は、頭部外傷、眼窩底骨折、外眼筋の障害、あるいは眼球運動を司る神経の障害などによって生じることがあります。後遺障害等級認定の実務上、複視の有無や程度を確認するため、ヘススクリーンテストによる複視野検査の結果が重要な判断資料とされています(実例1)。
もっとも、複視の所見は、検査時の体調、集中力、注視条件、受傷後の経過時期などによって変動し得るため、単回の検査では症状の実態が十分に反映されない場合があります。そのため、一度の検査で自覚症状が明確に捉えられなかったとしても、診療録上の一貫した症状の訴え、主治医の意見、治療経過などを総合的に考慮すれば、自覚症状に沿った後遺障害等級が認められる可能性があります(実例2)。
実例1 後遺障害等級認定(10級2号)
頭部外傷後に複視の症状が残存したものの、当初は後遺障害非該当とされていました。しかし、未実施であったヘススクリーンテストを受検し、その結果を添付して異議申立てを行ったところ、「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」として10級2号が認定されました。(担当 弁護士 吉田皓)
実例2 後遺障害等級変更(併合11級 → 併合9級)
横断歩道を歩行中に四輪車にはねられ、転倒して頭部を打撲したことにより、正面視における複視の症状が残存しました。当初の認定では、治療中に施行された複視野検査において「正面視での複視は認められない」と判断され、13級2号(周辺視の複視)の認定に留まっていました(他の障害と併せて併合11級)。
これに対し、主治医の意見書および診療録を添付したうえで、「複視の所見は検査時の条件等によって変動し得るものであり、単回の検査結果のみをもって自覚症状を否定するのではなく、治療経過全体に基づいて判断すべきである」と主張して異議申立てを行いました。その結果、正面視の複視が認められ、10級2号が認定されたことで、最終的に併合9級へと等級が繰り上がりました。(担当 弁護士
中島賢二郎)