びしょうしゅっけつこんのけんしゅつ
びまん性軸索損傷により、記憶障害や判断力の低下などの高次脳機能障害が後遺症として残存した場合でも、自賠責保険においては、原則としてMRIまたはCT画像上に局所性の脳挫傷痕が確認できなければ、後遺障害等級が認定されにくい傾向にあります。しかし、当事務所では、ヘモジデリンの沈着を手がかりに、MRIの磁化率強調像(SWI)により微小な出血痕が描出されたことを根拠として、後遺障害が認定された実例があります(実例1)。ヘモジデリンとは、赤血球が破壊された後に放出されるヘモグロビンが分解されて生じる、鉄を含む褐色色素です。MRI(磁気共鳴画像)は磁場を利用した検査であり、ヘモジデリン中の鉄成分は磁場に対して感受性を示すため、特有の信号変化を生じます。これにより、脳内における古い出血の痕跡を画像として描出することが可能となるのです。特に、T2スター強調像(T2*WI)や磁化率強調像(SWI)が有用とされています。
実例1 後遺障害等級変更:12級7号 → 併合8級(局所性脳挫傷を伴わないケース)
自転車乗車中に四輪自動車と衝突する交通事故により、跳ね飛ばされて頭部を打撲しました。健忘や易怒性といった症状が残存したものの、MRIでは局所性の脳挫傷痕は認められませんでした。そのため、当初は高次脳機能障害については非該当とされ、他の傷害についてのみ12級7号が認定されました。その後、微小出血痕を描出可能な磁化率強調画像を撮影したところ、当該画像において出血痕が確認されました。当事務所で受任後、当該画像および参考となる医学文献を添付して異議申立てを行った結果、高次脳機能障害について9級10号と認定され、他の傷害と併合して併合8級と判断されました。このように、最新の医学的知見に基づいた対応が可能である点は、当事務所の大きな特徴の一つです。(担当:弁護士
中島)