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交通事故 神戸 弁護士 栄町法律事務所

高次脳機能障害とは


高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは

 高次脳機能障害とは、脳損傷などを原因として、脳の前頭葉・側頭葉を中心とする高次脳機能に障害をきたし、「記憶」「注意」「遂行機能(計画・実行能力)」「情動の制御」などに支障が生じる状態を指します。交通事故のような外傷によっても発生します。これにより、日常生活や社会生活、就労において重大な困難を伴うことがあります。

<主な症状>

・記憶障害
 予定や約束をすぐに忘れる、同じ話を何度も繰り返す、金銭管理ができず同一の支払いを重複して行うなどの行動がみられます。

・注意障害
 注意が持続せず、気が散りやすくなるため、運転や家事などの活動中にミスを頻発します。

・遂行機能障害
 物事の順序立てや計画の立案・実行が困難となり、段取り良く行動することができなくなります。

・情動障害
 感情のコントロールが困難となり、些細な刺激に対して激しい怒りを示す、あるいは突然イライラするなど、感情面での不安定さがみられます。

<本障害の治療期間の対応にみられる問題点と当事務所の対応>

・治療段階で診断がなされないケース
 急性期治療では、まず生命の救命が優先されるため、高次脳機能障害が見過ごされやすい傾向があります。退院後も適切な診断やフォローが行われないまま示談が進められてしまうおそれがあるため、早期に法的対応や医療調整を行うことが重要です。

・治療終了後に症状が顕在化するケース
 入院中や自宅療養中には目立った問題がなくても、職場復帰後に、指示を覚えられない、感情が不安定になるといった症状が現れることがあります。このような場合には、日常生活状況報告書の作成に際して、潜在的な症状が明らかになるような工夫が求められます。

・見た目には障害が分かりにくいケース
 外見上は問題がないように見えても、特定の場面では実生活に支障が生じていることがあります。保険会社は後遺障害認定後にも、医療アジャスターとの面談を通じて症状の矛盾を探ろうとすることがありますが、短時間の面談では正確な判断が困難なため、専門家の同席や的確な説明が不可欠です。

 このように、高次脳機能障害の事案は、特有の難しさがあり、医学的な知見と法律的な対応の両面からの支援が必要となる、高度に専門的な分野です。

<本障害の自賠責保険後遺障害認定にみられる問題点と当事務所の対応>

 自賠責保険では、高次脳機能障害の後遺障害認定にあたって、事故後の意識障害の有無、画像所見、日常生活の変化などを中心に評価が行われます。ただし、たとえ等級認定がなされた場合でも、診断書や検査結果の内容が不十分なことが多く、異議申立ての要否については、他の外傷よりも慎重な検討が必要です。

 また、医学的には患者の将来の社会生活を正確に予測することは困難ですが、示談や訴訟においては、今後の社会適応状況が損害額の重要な争点となります。そのため、実生活に即した立証ができる弁護士の実務能力が、結果を大きく左右します。

 なお、高次脳機能障害と考えられる症状が存在していても、自賠責保険で後遺障害が否認される事例があり、以下のようなケースがあります。当事務所では、それぞれに対応する知識とノウハウを有しています。

① 画像に脳挫傷痕が見られないケース
急性期にCTしか撮影されていない場合、所見が画像に映らないことがあります。新たな根拠の取得には専門的な対応が必要ですが、事故から2~3年以内であれば、立証の可能性があります。

② 画像に脳萎縮の進行が見られないケース
脳萎縮は長期にわたって進行するため、事故から症状固定までの短期間では明確な変化が出ないことが多くあります。当事務所では、医学的文献を基に異議申立てを行い、成功した実績があります。

③ 意識障害が見られないケース
「軽度の意識障害」のように、記録に残りにくい症状についても、医学的研究を踏まえた資料を提出することで、認定を得た事例があります。

このように、高次脳機能障害の後遺障害認定は、高度な医学的理解と専門的な法的対応を要する分野であり、慎重かつ的確な支援が求められます。

<本障害の損害賠償請求訴訟にみられる問題点と当事務所の対応>

 高次脳機能障害に関する訴訟では、医学的知識をもたない裁判官が判断を下すため、被害者側の立証責任が重くなり、認定のハードルが自賠責保険よりも高くなります。そのため、まずは自賠責保険における後遺障害等級認定の獲得に全力を尽くすことが重要です。裁判となった場合には、障害の発生メカニズムや自賠責認定の基準を裁判官に丁寧に説明する必要があります。

 また、高次脳機能障害では事故時の記憶を失っていることが多く、事故態様などに関して加害者側の一方的な主張がなされる危険性があるため、事故直後からの情報収集が極めて重要です。当事務所では、入院中の被害者への聞き取りや家族との連携を通じて、事故状況の把握に努めています。

 さらに、治療中に就労不能となる場合も多いため、休業損害や治療費以外の諸費用の内払い交渉にもきめ細かく対応し、被害者が安心して治療に専念できる体制を整えています。

 当事務所では、示談提示前の段階から事件の依頼を受け付けており、事故直後からの弁護士関与を推奨しています。特に高次脳機能障害の事案では、保険会社が面談などで積極的に情報収集を行うため、早期の法的対応が有効です。

 これまでの事案で自賠責や労災の認定に関与する専門医と協議を重ねてきた経験があるほか、自賠責後遺障害認定に携わった職員OBも在籍しており、認定実務に即した立証活動が可能です。

 このように、当事務所では長年にわたり多数の高次脳機能障害事案を取り扱ってきた経験と知見を活かし、複雑で困難な案件にも的確に対応しております。