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弁護士の広告規制(「交通事故専門・プロ」という用語を使わず,「交通事故に強い弁護士を紹介する」とする情報提供サイトに登録しない理由)clinic guide

 日本弁護士連合会では,弁護士には公認された専門性の認証制度がないため,弁護士がたとえ特定の分野にどれほど習熟していたとしても,宣伝広告では特定分野について「専門」,「スペシャリスト」,「プロ」,「エキスパート」との表示を控えるべきであると定めています。そして「弁護士等のランク付けに関する記事であって、特定の弁護士の優劣を論じる記事のあるもの」に協力することも禁じています。
 当事務所で,数多く経験している分野について「専門」などの言葉を使用せず,「交通事故に強い弁護士を紹介する」と称する情報提供サイトに協力しないのは,このような指針に従っているからです。
 また,普通の人が見て第三者による評価サイトと誤認するような宣伝サイトは,いわゆる「ステルスマーケティング」であり,景品表示法5条の優良誤認表示に該当する可能性があるので,当事務所ではそのようなサイトに広告を出稿することはいたしておりません。

インターネット上の「交通事故に強い弁護士ランキング」「おすすめ」「クチコミ」「評判」にはどのような背景があるのかを考える必要もありそうです。

@ 特定分野の「専門・プロ・エキスパート」という用語は控えなければならない(弁護士には公認された専門性の認証制度がない

 法律によってすべての弁護士が加入することが定められている日本弁護士連合会の規則である「弁護士の業務広告に関する規程及び外国特別会員の業務広告に関する規程」の運用指針,「弁護士及び弁護士法人並びに外国特別会員の業務広告に関する運用指針」では,弁護士が宣伝広告で「専門分野」の表示を控えるべきであると定めています(平成22年11月17日日本弁護士連合会理事会議決)。医師とは異なり,弁護士には公認された専門性の認証制度がないからです。
 「専門性判断の客観性が何ら担保されないまま,その判断を個々の弁護士に委ねるとすれば,経験及び能力を有しないまま専門家を自称するというような弊害も生じるおそれがある。客観性が担保されないまま専門家,専門分野等の表示を許すことは,誤導の恐れがあり,国民の利益を害し,ひいては弁護士に対する国民の信頼を損なうおそれがあるものであり,表示を控えるのが望ましい。専門家であることを意味するスペシャリスト,プロ,エキスパート等といった用語の使用についても,同様とする。(上記指針)」とされているのです。
 したがって,単に「専門」という用語を避ければいいのではなく,当該弁護士の主観的評価にすぎないことが明確でなく,あたかも客観的な能力評価を受けているような誤解を与えかねない,「スペシャリスト」,「プロ」,「エキスパート」などの専門家であることを意味する用語も同様に控えなければならないのです。

A 特定の弁護士の優劣を論じる記事に協力してはいけない(
自分で自分のランキングをつけていたら世話がない

 さらに,弁護士等のランク付けにに関する記事であって、特定の弁護士の優劣を論じる記事のあるものに協力してはならないとされています(上記指針)。自分で自分のランキングをつけていたら世話はないからです。
 弁護士以外の第三者が運営する弁護士情報提供サイトで「交通事故に強い弁護士」という用語を使用したものをよく見かけますが,「厳選」,「ランキング」といった優劣の評価を意味する言葉を付して弁護士以外の第三者が運営する弁護士情報提供サイトは、「特定の弁護士の優劣を論じるもの」に該当するといえます。
 したがって,弁護士が,金銭の支払いの有無にかかわらず,弁護士以外の第三者が運営する情報提供サイトなどで「ランキング」,「厳選」といった言葉を付して「交通事故に強い弁護士」という用語を使用しているものに,協力することも規程に違反するものと考えます。

B 第三者による能力評価サイトと誤認されるような宣伝サイト(ステルスマーケティング)となることを回避しなければならない(
第三者のメディアに出稿する記事広告には「業務広告」の文字で宣伝であることを明確に

 なお,そういったサイトが交通事故を扱う弁護士の網羅的な調査を行ったことなど一度たりともありませんので、「交通事故に強い」などの能力評価は客観的なものではありません。そのようなサイトに掲載されている弁護士自身に聞いてみればわかることです。
 そして,普通の人が見て「第三者による能力評価サイト」であると見間違うような「宣伝サイト」(いわゆる「ステルスマーケティング」)は,景品表示法の不当表示(優良誤認表示)に該当する可能性があります。この点については,既に消費者庁に意見照会を行いその見解も確認しています。
 そのため日本経済新聞などの大手新聞社が掲載する弁護士事務所の記事広告には「業務広告」など弁護士事務所が自ら料金を払って依頼した広告であることを明確にする文字を付して掲載しています。法律家である弁護士事務所側は当然のことですがメディア側も厳しい出稿審査を行っているからです。

 ランキングサイトなどの形式で他人による評価を装った宣伝広告サイトが正当化される余地はないものといえます。


 
結論的には,弁護士の宣伝広告は自らの名前で出すか,第三者の記事広告を利用する場合は「業務広告」の文字を掲載してもらうほかありません。

 当然のことですが,ルールを知らない弁護士では裁判に勝てません。

 何より重要であるのは,こうした規制は依頼者の利益を保護するために設けられているという点です。それにもかかわらず,規制違反の広告を出しているのであれば,その弁護士は依頼者のことを考えてはいないと言われても仕方がありません。そのようなサイトに掲載している弁護士も,まじめに仕事をしている弁護士がほとんどと思いますので,問題点に気付いて欲しいと思います。

 私自身もできるだけ自分の事務所をアピールしたいと思っていますが,法律家である以上,ルールに従ってホームページを作らなければならないと考えています。
 当事務所が,数多く経験している分野についても,あえて「専門」,「プロ」などの言葉を使用せず,客観的な能力評価を受けていると誤信させるような「専門弁護士」,「交通事故に強い弁護士」を紹介するなどの表現を使用する弁護士情報提供サイトに協力しないのは、弁護士会の規程・指針に従っているからです。
 もしそういった情報提供サイトに「栄町法律事務所」が掲載されていたとしても,無断掲載であり,当事務所からは何ら協力していません。