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弁護士の広告規制clinic guide

 広告掲載費用を徴収する宣伝サイトでありながら、「業務広告」であることを明示せず、「ランキング」といった形式で、第三者による能力評価サイトやクチコミ・評判をまとめたサイトであるかのように誤認させる体裁のものは、いわゆる「ステルスマーケティング」として、日弁連の規程で禁止されている「誤導または誤認のおそれのある広告」や、景品表示法第5条における不当表示(優良誤認表示)に該当する可能性があります。

 日本弁護士連合会の規則である「弁護士の業務広告に関する規程」の運用指針では、「弁護士等のランク付けに関する記事であって、特定の弁護士の優劣を論じる内容を含むものに対しては、金銭その他の利益を供与したり、協力したりしてはならない」と定められています。
 自分で自分のランキングを付けていたら、本末転倒だからです。

 ランク付け記事に広告費を支払うことはもちろんのこと、協力する行為そのものも禁止されており、原稿の提供、アンケートへの回答、インタビューへの応答なども禁止事項として明示されています。

 弁護士紹介サイトにおいて「交通事故に強い弁護士」といった表現が使用されている例をよく見かけますが、「厳選」「ランキング」など、優劣の評価を意味する言葉を伴う場合には、これらのサイトは「特定の弁護士の優劣を論じるもの」に該当するといえます。
 したがって、弁護士がそのようなサイトに広告費を支払うことはもちろん、原稿の提供などの形で協力することも、規程に違反する行為と考えられます。

 さらに言えば、弁護士紹介サイトが、交通事故を取り扱う弁護士の能力について網羅的な調査を行ったことは、一度たりともありません。こうしたサイトに掲載されている弁護士本人に尋ねてみれば、そのことはすぐに分かるでしょう。
 したがって、これらのサイトが「交通事故に強い」などと表示する根拠も不明確です。

 そもそも、すべての顧客に同じサービスを提供するレストランなどとは異なり、弁護士の仕事は、依頼者ごとの事情に応じてオーダーメイドで対応するものであり、その善し悪しを外部から客観的に評価すること自体が極めて困難です。

 加えて、サイト運営者が弁護士から広告料の支払いを受けているにもかかわらず、その事実を明示せず、あたかも「第三者による能力評価サイト」であるかのような体裁をとっている場合、そのような弁護士紹介サイトは「ステルスマーケティング」に該当する可能性があります。
 これは、弁護士等の業務広告に関する規程で禁止されている「誤導または誤認のおそれのある広告」にあたる可能性があるだけでなく、景品表示法における不当表示にも該当するおそれがあります。
(この点に関する景品表示法の解釈については、平成29年に当事務所が国会議員を通じて消費者庁に意見照会を行い、その見解も確認しました(景品表示法第5条第1号「優良誤認表示」、第2号「有利誤認表示」として問題となる恐れがあるとの回答)。なお、消費者庁は令和5年10月1日、景品表示法第5条第3号に基づく告示によりステルスマーケティング規制を導入しました。)

 
したがって、宣伝広告でありながら「ランキング」のような形式で他人による評価を装うようなサイトが正当化される余地はないといえます。

 ステルスマーケティングと見なされることを回避するためには、

① 弁護士が自らの名前で宣伝広告を出す、

② 「業務広告」の表示を明確に掲載してもらう、

のいずれかの方法をとらなければならないものと考えます。

 何より重要なのは、こうした規制が依頼者の利益を保護するために設けられているという点です。それにもかかわらず、規制に違反する広告を出しているのであれば、その弁護士は依頼者のことを真剣に考えていないと言われても仕方がありません。

 当事務所は、客観的な能力評価であるかのような誤解を与える弁護士紹介サイトには一切協力しておりません。これは、弁護士会の規程および指針に従っているためです。
 仮に、そのような弁護士紹介サイトに「栄町法律事務所」の名前が掲載されていたとしても、それは無断掲載であり、当事務所が協力したものではありません。