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弁護士の広告規制clinic guide

 広告掲載費用を徴収する宣伝サイトでありながら、「業務広告」であることを明示せず、「ランキング」といった形式で、第三者による能力評価サイトやクチコミ・評判をまとめたサイトであるかのように誤認させる体裁のものは、いわゆる「ステルスマーケティング」として、日弁連の規程で禁止されている「誤導または誤認のおそれのある広告」や、景品表示法第5条における不当表示(優良誤認表示)に該当する可能性があります。

 日本弁護士連合会の規則では、「弁護士等のランク付けに関する記事であって、特定の弁護士の優劣を論じる内容を含むものに対しては、金銭その他の利益を供与したり、協力したりしてはならない」と定められています(「弁護士の業務広告に関する規程」第3条、第8条、「業務広告に関する指針」第7 2(2))。

 これは、自らが自らをランク付けするような行為は本末転倒であるとの考えに基づくものです。

 ランク付け記事に広告費を支払うことはもちろん、記事に協力する行為そのものも禁止されており、具体的には、原稿の提供、アンケートへの回答、インタビューへの応答なども明示的に禁止事項とされています。

 弁護士紹介サイトにおいて、「交通事故に強い弁護士」といった表現が用いられる例をよく見かけますが、「厳選」「ランキング」などの優劣を示す言葉が添えられている場合、これらのサイトは「特定の弁護士の優劣を論じるもの」に該当する可能性があります。

 したがって、弁護士がそのようなサイトに広告費を支払うことはもちろん、原稿の提供などにより協力することも、規程に違反する可能性がある行為と考えられます。

 さらにいえば、これらの弁護士紹介サイトが、交通事故を取り扱う弁護士の能力について網羅的かつ客観的な調査を行った例は一度も確認されていません。実際に掲載されている弁護士に尋ねてみれば、それはすぐに明らかになるはずです。

 このように、「交通事故に強い」と表示される根拠は不明確であり、表示の信頼性にも疑義があります。

 そもそも、すべての顧客に同一のサービスを提供するレストランなどとは異なり、弁護士の業務は依頼者ごとの事情に応じたオーダーメイドの対応が求められるものであり、その業務の良し悪しを外部から客観的に評価すること自体、極めて困難です。

 加えて、サイト運営者が弁護士から広告料の支払いを受けているにもかかわらず、その事実を明示せず、あたかも第三者による中立的な能力評価であるかのような体裁をとっている場合、当該弁護士紹介サイトは「ステルスマーケティング」に該当する可能性があります。これは、「弁護士の業務広告に関する規程」における「誤導または誤認のおそれのある広告」に該当するおそれがあるだけでなく、景品表示法上の不当表示にも抵触する可能性があります。

(なお、この景品表示法の解釈については、当事務所が平成29年に国会議員を通じて消費者庁に意見照会を行った結果、「景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)および第2号(有利誤認表示)に該当するおそれがある」との見解を確認しています。また、消費者庁は令和5年10月1日、同法第5条第3号に基づく告示によりステルスマーケティング規制を導入しました。)

 したがって、宣伝広告でありながら「ランキング」の形式を取り、第三者による評価であるかのように装うサイトが正当化される余地はないといえます。

 さらに視点を変えれば、弁護士法により、弁護士以外の者が継続的に経済的利益を得る目的で弁護士に事件を周旋することは禁じられており、弁護士もそのような者から事件の周旋を受けることはできません(弁護士法第27条)。

 しかし、「おすすめ弁護士」などとして弁護士名の前に王冠を表示して紹介するものの、その「おすすめ」の基準が明記されておらず、掲載弁護士から受領する金銭の多寡に応じて掲載順が決定されているような紹介サイトに広告を掲載する行為は、実質的にサイト運営会社から事件の周旋を受けているのと同様の構造にあると考えられています(日弁連『弁護士業務広告の初歩』8ページ)。

 そのため、そのようなサイトへの広告掲載行為は、弁護士会の規則により禁止されています(弁護士職務基本規程第11条、「弁護士情報提供ウェブサイトへの掲載に関する指針」3(2)ア)。

 何より重要なのは、これらの規制が依頼者の利益を守るために存在しているという点です。

 したがって、こうした規制に反する広告を行っている弁護士がいれば、その弁護士は依頼者の利益を真剣に考えていないと受け取られても仕方がありません。

 当事務所は、客観的な能力評価であるかのような誤解を生じさせる弁護士紹介サイトには一切協力しておりません。これは、弁護士会の規程および指針を順守するためです。仮に、そのような弁護士紹介サイトに「栄町法律事務所」の名前が掲載されていたとしても、それは無断掲載であり、当事務所が協力したものではありません。